プログラマも電気屋も経験したヤスです。
先日、IT技術者に電気・電子を勧める記事を書きました。
そこで、IT技術者向けに簡単に電気のことが分かる記事を書きました。
電気とは?
電気とは、電荷の移動によって生じる様々な現象のことです。
おそらく、皆さんは、電気というものが直接何かしらの作用をして、LEDが点灯したり、機械が動いたりしていると考えているでしょう。
しかし、実際は、電気が直接作用するのではなく、電気によって生じる現象を利用して、電気を別のエネルギーに転換して使用しています。
さて、最初の一文に戻りますが、電気を知らない人は、この一文を見ても何を言っているの分からないと思います(笑)。
おそらく、この一文の中で分からない言葉は、電荷と様々な現象だと思います。
電荷って何? どんな現象が起きるの?
これらについて理解できるように順番に説明します。
また、様々な現象についてですが、今回は電気によって熱エネルギーが生じる現象をピックアップして説明します。
電荷とは?
電荷とは、プラスまたはマイナスに帯電した状態の原子のことです。
まず、原子のおさらいをしましょう。
原子は、原子核と電子から成る最小の物質です。
電子は、マイナスの極性を持ち、原子核の周囲に一定の間隔で配置されています。
また、この一定間隔で電子が配置されている場所を電子殻と呼びます。
原子核は、プラスの極性を持つ陽子と無極性の中性子から成ります。
この陽子の数と原子の数が同数の場合、この原子は電気的に中性と言います。
ここで、電気的に中性な原子から、電子を1つ取り除きます。
電子が1つ減ると、電子の数より陽子の数が多くなります。
陽子の数が多くなるということは、プラスの力が強くなるということです。
この状態の原子をプラスの電荷(正電荷)と呼びます。
今度は、中性の原子に電子を付与します。
そうすると、陽子の数より電子の数が多くなります。
電子の数が多いということは、マイナスの力が強く作用している状態です。
この状態の原子をマイナスの電荷(負電荷)と呼びます。
ここまでに、正負の電荷を説明するために、中性の原子に対して簡単に電子の移動をさせましたが、実際は原子の種類によって電子の移動度が変わります。
電子の移動度は、物質の結晶構造や結合状態、最外殻(原子核から最も離れた位置にある原子核)の電子の数などで決まります。
電子の移動度が高い物質の1つに鉄や銅などの金属があります。
ここでは、電線によく使用される銅を例にとり説明します。
銅の原子モデルは、次図の通りです。
図より、銅の最外殻には、電子が1つしか存在しません。
この最外殻にある電子を価電子と言います。
銅の場合、価電子が1つのため、外からのエネルギーが1つの電子に集中します。
そのため、殻から抜け出す十分なエネルギーが与えられ、殻から電子が移動しやすい状態と言えます。
最外殻から電子が抜けた銅原子は、プラスに帯電し、抜けた電子は銅の分子内を移動します。
この電子を自由電子と言います。
そして、この自由電子の移動が電気と呼ばれるものの正体になります。
では、価電子が外部から受けるエネルギーとは何でしょうか?
これがなければ、電子が殻から抜けることはありません。
この外部から働く力をクーロン力と言います。
自由電子を動かすクーロン力
クーロン力は、簡単に言うと、プラスとマイナスに働く斥力・引力です。
皆さんの身近なもので言うと、磁石と同じ作用です。
磁石には、S極とN極があり、同極だと反発し、異極だと引き寄せ合います。
クーロン力も同じです。
プラス同士、マイナス同士だと反発(斥力)し、プラスとマイナスだと引き寄せ合う(引力)状態になります。
また、異極の場合は、マイナスがプラスに引かれる状態になります。
それは、原子モデルで考えると納得がいきます。
プラスの電荷は、電子が不足している状態であり、マイナスの電荷は、電子が過剰な状態です。
異極で引力が働くというのは、原子同士が引き合うわけではなく、原子が持つ電子が引き寄せられることを意味します。
このように、負電荷に対して正電荷の力が働くのには、電荷のエネルギーの高低が関係します。
物理では、重力による位置エネルギーがありますが、電荷にも同じように電気的な位置エネルギーが存在します。
これを電位と言います。
正電荷と負電荷が一つずつ一定の距離で存在する場合、その中間点が基準電位となり、そこから正電荷側の位置エネルギーが高く、負電荷側の位置エネルギーが低い状態と定義されています。
“電圧”は電位差
前項で電荷には電位が存在することを説明しました。
電位は、正電荷で高く、負電荷で低いです。
この電位の高低を電位差と呼び、これを一般的に電圧と言います。
この電圧を発生させることで、電荷を移動させることが出来ます。
しかし、1つの正電荷、1つの負電荷が電圧により電荷の移動が発生すると、2つの電荷は両方とも中性になります。
そのため、電気エネルギーを得るには、常に正電荷と負電荷を供給しないといけません。
この正電荷と負電荷を供給し、電圧を発生させる原因となるものを起電力と言います。
起電力の例として電池が挙げられます。
電池は、化学反応を利用して電圧を発生させる電気化学の1つです。
他にも、熱を利用した火力発電、風力を利用した風力発電、運動エネルギーを利用した発電機があります。
電荷の移動が”電流”
ここまでで、電圧の意味と電圧により電荷の移動が発生することを学びました。
次に電荷の移動を定義します。
まず、電荷の移動は、電流と定義されます。
電荷の移動は、負電荷の持つ過剰な電子が電圧により最外殻から抜け出し、電位が高い方へ行くことなので、実際は電子がマイナス側からプラス側へ移動しています。
しかし、電流の定義は、プラス側からマイナス側の方向に電荷が移動することを示します。
これは、歴史の都合によるものです。
電子より先に電流という現象が確認され、その時に電流の定義をプラス側からマイナス側へ流れると決めてしまったため、実際の電荷の移動と異なることになりました。
電気的な都合を考えれば、電子がプラスの電荷と定義した方が分かりやすかったのではないかと思います。
また、電流の大きさというのは、単位面積あたりの1秒間に通過する電荷量で定義されます。
オームの法則
電流と電圧は、比例の関係にあります。
それを定義した式が皆さんご存じのオームの法則です。
オームの法則は、次式で表されます。
オームの法則: V = R・I
ここで、Vが電圧、Rが抵抗、Iが電流を表します。
この式より、R(抵抗)が一定の時、V(電圧)が増加するとI(電流)も増加する比例関係にあることが分かります。
また、V(電圧)が一定のとき、I(電流)はR(抵抗)と反比例の関係にあります。
まとめると、I(電流)はV(電圧)に比例、R(抵抗)に反比例するということです。
オームの法則は、電気では基本となる式です。
この式で多くの事が説明できます。
ここで新たに抵抗という言葉が出てきました。
抵抗とは、一体何でしょうか?
抵抗とは電子と原子の衝突
電子は原子の間を縫って移動していきます。
原子は、熱振動や格子運動により振動しており、電子が移動する際にこの原子と衝突します。
この原子との衝突により電子の移動が妨げられる現象を電気抵抗と呼びます。
物質毎に原子の密度や並びが異なるため、電気抵抗率も物質に依存します。
また、原子が振動することにより、熱を発生させます。
熱の元になるのが原子の振動なのです。
そして、電子が原子に衝突することで、より原子の振動が大きくなり、熱も同時に大きくなります。
この熱をジュール熱と呼びます。
ジュール熱は、電流の二乗または電圧の二乗に比例し、抵抗に反比例します。
ここで、「あれ?ジュール熱って、原子との衝突で発生するんでしょ?抵抗が高い方がジュール熱も高いんじゃないの?」と思った方もいると思います。
ここで思い出してもらいたいのがオームの法則です。
オームの法則では、電流と抵抗は反比例の関係にあると説明しました。
また、抵抗というのは、原子の格子運動や熱振動によるもので、物質に依存するものだという説明もしました。
電子の衝突による原子の振動と、元々物質が持っている原子の振動とは別です。
そのため、抵抗値が小さいと電流値が大きくなり、それにより電子と原子が衝突する割合いが増え、原子の振動がより大きくなり、同時に熱もより大きくなるというわけです。
電球で見る電気エネルギーの利用例
実際に電気エネルギーの利用例を見てみましょう。
ここでは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して利用する例を示します。
電気エネルギーを熱エネルギーとして用いている例として、白熱電球があります。
白熱電球は、電球の内部にあるフィラメントと呼ばれる物質に電流を流すと、ジュール熱によりフィラメントが発熱し、その熱により発光します。
ここまでの理論を理解していれば、電球を光らす理論も理解出来ると思います。
電気を知ることでモノが分かる
私たちの身の回りには、電気で動くモノばかりです。
普段から使っているパソコンなんて、電気や電子の集まりです。
今回は、電気エネルギーから熱エネルギーを得て、それを利用する方法を紹介しましたが、他にも運動エネルギー(モーター)への変換や、電子材料(トランジスタなど)への利用など様々な用途に利用出来ます。
次回は、IT技術者に近いトランジスタやCPUを取り上げたいと思います。
イメージがしにくい電気をたくさんの図を用いて解説しています。
本記事で取り扱った電気の初歩の初歩から教えてくれるので、初級者にとても優しいです。
文系でも読める電磁気学の初級者向けの本です。
電気の歴史から電磁気を紐解いていくため、電気の流れを順番に学べます。
また、難しい数式が少ないため、さらっと読める一冊です。
電磁気学の導入に良いです。